水質分析
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岩手県薬剤師会検査センターは 水道GLP認定検査機関 として認定されています。
水道GLPとは、水道水質検査優良試験所規範(Good Laboratory Practice : GLP)の略称であり、水質検査結果の精度と信頼性を確保するための認定制度です。これは、国際規格であるISO9001とISO/IEC17025の一部を基に、水道水質検査に特化させた規格です。
水道水
水道により供給される水は、水質基準に関する省令(平成15年5月30日厚生労働省令第101号)により、その基準が定められています。
水道水は、水質基準に適合するものでなければならず、水道法により、水道事業体等に検査の義務が課されています。水質基準以外にも、水質管理上留意すべき項目を水質管理目標設定項目、毒性評価が定まらない物質や、水道水中での検出実態が明らかでない項目を要検討項目と位置づけ、必要な情報・知見の収集に努めています。
岩手県薬剤師会検査センターは、水道事業者様が必要な検査計画のコンサルティング及び水質検査を行っています。
飲用井戸水
岩手県では「飲用井戸等衛生対策要領」により、飲み水に使用している井戸などの管理基準や水質検査の実施について定めています。沢水、井戸水及び湧水などは水質が変わらないものではなく、病原菌による汚染など、周囲の影響によって水質が悪化する場合があります。井戸、湧水や沢水などを飲み水用に利用されている場合は、適正に管理し、定期に水質検査を行うことが望ましいです。
検査項目としては、一般細菌、大腸菌、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、塩化物イオン、有機物、pH値、味、臭気、色度、濁度その他水質基準項目のうち周辺の状況から必要と判断される項目が挙げられます。
水質検査項目
※検査項目名をクリックすると解説が表示されます。
No. | 項目名 | 水質基準 | 51項目 浄水 全項目 |
40項目 原水 全項目 |
省略不可 23項目 |
一般飲用 11項目 (営業許可) |
ビル管 16項目 |
ビル管 12項目 (6月~ 9月) |
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1 | 一般細菌 | 100個/ml以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
2 | 大腸菌 | 検出されないこと | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
3 | カドミウム及びその化合物 | 0.003mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
4 | 水銀及びその化合物 | 0.0005mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
5 | セレン及びその化合物 | 0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
6 | 鉛及びその化合物 | 0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
7 | ヒ素及びその化合物 | 0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
8 | 六価クロム化合物 | 0.02mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
9 | 亜硝酸態窒素 | 0.04mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
10 | シアン化物イオン及び 塩化シアン |
0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
11 | 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 | 10mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
12 | フッ素及びその化合物 | 0.8mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
13 | ホウ素及びその化合物 | 1.0mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
14 | 四塩化炭素 | 0.002mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
15 | 1,4-ジオキサン | 0.05mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
16 | シス-1,2-ジクロロエチレン及び トランス-1,2-ジクロロエチレン |
0.04mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
17 | ジクロロメタン | 0.02mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
18 | テトラクロロエチレン | 0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
19 | トリクロロエチレン | 0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
20 | ベンゼン | 0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
21 | 塩素酸 | 0.6mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
22 | クロロ酢酸 | 0.02mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
23 | クロロホルム | 0.06mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
24 | ジクロロ酢酸 | 0.03mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
25 | ジブロモクロロメタン | 0.1mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
26 | 臭素酸 | 0.01mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
27 | 総トリハロメタン | 0.1mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
28 | トリクロロ酢酸 | 0.03mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
29 | ブロモジクロロメタン | 0.03mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
30 | ブロモホルム | 0.09mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
31 | ホルムアルデヒド | 0.08mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
32 | 亜鉛及びその化合物 | 1.0mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
33 | アルミニウム及びその化合物 | 0.2mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
34 | 鉄及びその化合物 | 0.3mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
35 | 銅及びその化合物 | 1.0mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
36 | ナトリウム及びその化合物 | 200mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
37 | マンガン及びその化合物 | 0.05mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
38 | 塩化物イオン | 200mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
39 | カルシウム、マグネシウム等(硬度) | 300mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
40 | 蒸発残留物 | 500mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
41 | 陰イオン界面活性剤 | 0.2mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
42 | ジェオスミン | 0.00001mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
43 | 2-メチルイソボルネオール | 0.00001mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
44 | 非イオン界面活性剤 | 0.02mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
45 | フェノール類 | 0.005mg/l以下 | 〇 | 〇 | ||||
46 | 有機物 (全有機炭素(TOC)の量) | 3.0mg/l以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
47 | pH値 | 5.8~8.6 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
48 | 味 | 異常でないこと | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
49 | 臭気 | 異常でないこと | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
50 | 色度 | 5度以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
51 | 濁度 | 2度以下 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
アンモニア性窒素 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
残留塩素 (※浄水) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
No.1 一般細菌
従属栄養細菌のうち、温血動物の体温前後で比較的短時間に集落を形成する(標準寒天培地を用いて36±1℃、24±2時間培養した時、培地に集落を形成する)細菌をいう。一般細菌として検出される細菌の多くは、直接病原菌との関連はないが、汚染された水ほど一般細菌が多く検出される傾向があるので、水の汚染状況や飲料水の安全性を判定する指標となっている。
No.2 大腸菌
特定酵素基質培地法によってβ-グルクロニダーゼ活性を有する好気性または通性嫌気性の菌をいう。大腸菌は人や温血動物の腸管内に常在し、糞便由来ではない細菌も含む大腸菌群と比べて糞便汚染の指標として信頼性が高い。大腸菌には一般に病原性はないが、一部に下痢や腸炎等の病原性を示すものがあり、「病原性大腸菌」と呼ばれている。
No.3 カドミウム及びその化合物
自然水のカドミウムは存在してもわずかだが鉱山(亜鉛鉱山)排水、工場排水、廃棄物処分場の排水等が混入して汚染が起きることがある。摂取したカドミウムは腎臓に蓄積し障害をもたらす。富山県神通川流域で発生したイタイイタイ病はカドミウムによる慢性中毒として知られている。
No.4 水銀及びその化合物
一般には無機水銀(金属水銀等)と有機水銀化合物(メチル水銀等)に分けられる。経口摂取した無機水銀は吸収されにくいため毒性は低いが、主に腎臓に蓄積して健康に影響する。有機水銀は吸収されやすく中枢神経系に作用して、感覚異常や視野狭窄、運動障害等をもたらす。熊本県における工場排水中のメチル水銀が原因となって発生した水俣病が知られている。
No.5 セレン及びその化合物
自然水中に含まれることがあるが、その多くは鉱山排水、工場排水などの混入による。セレンは生体の微量必須元素で酵素やタンパク質を構成する成分である。中国で古くから地方病的に発生した「克山病」という心筋障害はセレン欠乏症といわれる。日本人の1日摂取量は約0.02mg。一方過剰摂取すると爪、髪、胃腸、皮膚、肝臓に障害が起きる。
No.6 鉛及びその化合物
自然水中には地質、工場排水、鉱山排水に由来して溶存することがある。給水管に鉛管が使用されていると溶出によって水道水から検出される場合がある。鉛は蓄積性のある毒性物質であり、摂取した鉛は骨に蓄積され、成人よりも小児のほうが吸収率が高い。疲労感や消化器官障害、神経障害などの慢性中毒症状を引き起こす。鉛の毒性と蓄積性を考慮して、平成5年からの10年間に鉛管の布設替えを中心とした、計画的な鉛濃度低減化対策の実施を厚生労働省は指導している。平成15年4月から基準値は0.01mg/L以下となる。
No.7 ヒ素及びその化合物
自然水中のヒ素は地質に起因しているが火山性温泉や鉱山排水、精錬排水、染料、製革工場排水の混入による汚染が起こることがある。ヒ素は蓄積性があり感覚異常や皮膚の角化、末梢性神経症などを起こす。ヒ素による健康被害は、西日本一帯で起きたヒ素ミルク中毒事件が知られている。
No.8 六価クロム化合物
自然水中にはほとんど検出されないが、工場排水(メッキ、染料、皮革等)の混入による汚染が起こることがある。クロムは生体の微量必須元素で不足すると糖、脂質、タンパク質代謝系に障害を起こす。クロムはいくつかの原子価(+2、+3、+6)をとるが、六価のクロムが毒性が強く、慢性的に経口摂取すると肝炎が見られ、粉塵を吸入すると皮膚、呼吸器の障害や肺がん、鼻中隔さく孔が起こる。
No.9 亜硝酸態窒素
近年の知見からきわめて低い濃度でも影響があることがわかってきたことから、幼児にメトヘモグロビン血症を発症させることがないように定められた。
No.10 シアン化物イオン及び塩化シアン
自然水中にはほとんど存在しないので、シアン化合物が検出されたときはシアンを含む工場排水(メッキ工業、金属精錬、写真工業、都市ガス製造工業等)の混入による。シアン化合物の毒性は青酸ガスや青酸カリとして知られている。中毒症状としてはめまい、頭痛、意識喪失等で、高濃度に摂取すると呼吸中枢麻痺による呼吸停止を起こし、死に至る。
No.11 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
硝酸塩と亜硝酸塩は自然界における窒素循環の一化学形態であり、硝酸塩と亜硝酸塩は一方の形態から他方の形態へと転換するので、窒素の量的関係を把握するために硝酸塩と亜硝酸塩のそれぞれを窒素量で表わし、その合計量で評価する。健康影響は、硝酸態窒素が体内で急速に亜硝酸態窒素へ還元された後、血液中のヘモグロビンと反応して、メトヘモグロビン血症を起こす(ひどいと窒息状態となる)。特に6ヶ月未満の乳児に見られる。硝酸態窒素は、あらゆる場所の土壌、水、野菜を含む植物中に広く存在しており、亜硝酸態窒素も非常に低濃度であるが広く存在している。水中の硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の由来は、下水、工場排水、し尿、肥料、腐敗した動物、塵芥等であり、それらの汚染の指標ともなっている。
No.12 フッ素及びその化合物
自然水中のフッ素は主に地質に由来するが、工場排水の混入による汚染もある。フッ素をある程度含む水は虫歯の予防効果があるといわれ、フッ素を添加した水道水を供給している事例が海外に見られる。一方、フッ素の多い水を長期間摂取すると斑状歯(歯の表面が侵されて白濁した斑点ができるもので、乳幼児から14才ぐらいまでに形成される)や骨格フッ素中毒症になる。
No.13 ホウ素及びその化合物
自然水中に含まれることはまれであるが、火山地帯の地下水や温泉、工場排水(金属表面処理、ガラス、エナメル工場)が自然水に混入することがある。多量に摂取すると消化器、神経中枢等に影響を及ぼす。
No.14 四塩化炭素
揮発性有機塩素化合物で、フロンガス11、12等冷媒の原料、各種溶剤、洗浄剤に使用されている。人への健康影響は肝臓、腎臓や神経系の障害で、発がん物質の可能性があるとされている。
No.15 1,4-ジオキサン
揮発性有機化合物で、樹脂やワックス等の溶媒として使用されている。人への健康影響は中枢神経、肝臓、腎臓の障害である。
No.16 シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2-ジクロロエチレン
揮発性有機塩素化合物で、化学合成の中間体、染料抽出剤、溶剤、熱可塑性樹脂の原料に使用されている。人への健康影響は麻酔作用である。
No.17 ジクロロメタン
揮発性有機塩素化合物で、塗料の剥離溶剤、洗浄溶剤、天然物抽出剤等に使用されている。人への健康影響は中枢神経系の障害で、発がん物質の可能性があるとされている。
No.18 テトラクロロエチレン
揮発性有機塩素化合物で、ドライクリーニング洗浄剤、原毛洗浄剤、金属洗浄溶剤、フロン113の原料に使用されている。人への健康影響は中枢神経系、肝臓、腎臓の障害で、発がん物質の可能性があるとされている。
No.19 トリクロロエチレン
揮発性有機塩素化合物で、金属部品脱脂洗浄剤、ドライクリーニング洗浄剤等に使用されている。人への健康影響は嘔吐、腹痛、中枢神経系の障害である。
No.20 ベンゼン
揮発性有機化合物で、染料、合成ゴム、合成洗剤のほか各種有機合成化学品の原料に使用されている。人への健康影響は中枢神経系の障害、再生不良性貧血、白血病で、発がん物質である。
No.21 塩素酸
浄水処理過程で消毒剤として用いた二酸化塩素の分解または次亜塩素酸ナトリウムの酸化により生成する。人への健康影響はメトヘモグロビン血症、無尿、腹痛及び腎不全等である。
No.22 クロロ酢酸
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成される消毒副生成物の一つ。人への健康影響は皮膚や粘膜に強い刺激作用である。
No.23 クロロホルム
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成されるトリハロメタンの成分の一つ。人への健康影響は麻酔作用、肝臓、腎臓の障害で、発がん物質の可能性があるとされている。
No.24 ジクロロ酢酸
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成される消毒副生成物の一つ。人への健康影響は皮膚や粘膜に強い刺激作用である。
No.25 ジブロモクロロメタン
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成されるトリハロメタンの成分の一つ。人への健康影響は、肝臓で酸化されてブロモラジカルとなり、生体成分と反応して毒性を発現すると推定されている。
No.26 臭素酸
浄水処理過程でオゾンを使用する場合、臭素イオンから消毒副生成物として生成する。人への健康影響は、腹痛、中枢神経系の障害、呼吸困難等で、発がん物質の可能性があるとされている。
No.27 総トリハロメタン
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成されるクロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムの濃度の総和をいう。一般にクロロホルムが最も多く生成されるが、海水等の影響を受ける原水では臭素化トリハロメタンが多い。
No.28 トリクロロ酢酸
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成される消毒副生成物の一つ。人への健康影響は皮膚や粘膜に強い刺激作用である。
No.29 ブロモジクロロメタン
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成されるトリハロメタンの成分の一つ。人への健康影響は、肝臓で酸化されてブロモラジカルとなり、生体成分と反応して毒性を発現すると推定されている。発がん物質の可能性があるとされている。
No.30 ブロモホルム
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成されるトリハロメタンの成分の一つ。人への健康影響は、肝臓で酸化されてブロモラジカルとなり、生体成分と反応して毒性を発現すると推定されている。
No.31 ホルムアルデヒド
浄水処理過程で消毒用の塩素と水中のフミン質等の有機物質が反応して生成される消毒副生成物の一つ。人への健康影響は皮膚や粘膜に強い刺激作用であり、発がん物質の可能性があるとされている。
No.32 亜鉛及びその化合物
自然水中の亜鉛濃度は微量であり、水中への汚染としては鉱山排水、工場排水等の混入がある。水道の障害としては、給水管に使用した亜鉛メッキ鋼管の溶出によるものがある。亜鉛は生体の必須元素で、欠乏すると食欲不振、味覚障害、成長阻害、脱毛等の症状が現われる。成人の1日摂取量は約15mg。高濃度の水を摂取すると嘔吐、吐き気、下痢、腹痛の症状が見られるが、人に対する毒性は低い。基準値を超えるようになると、水が白濁したり、お茶の味が悪くなったりする。
No.33 アルミニウム及びその化合物
自然水中のアルミニウムは地質や土壌に由来して存在するが、溶解度が小さいため量は少ない。水道では濁質を除去するためにポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウムを凝集剤として使用しているが、適正な浄水処理を行えば、水道水に残留するアルミニウムはごく微量である。アルミニウムを摂取してもほとんど吸収されずに尿へ排出される。基準値を超えるようになると、配管内に沈殿物が生じたり、鉄の着色を助長したりする。
No.34 鉄及びその化合物
自然水中の鉄は岩石、土壌に由来し、溶解性または不溶解性の鉄として広く存在する。水道の障害としては、給水管の老朽化による赤水、異臭味、錆コブによる通水不良がある。鉄は生体の必須元素で、欠乏すると貧血症状が現われる。成人の1日必要摂取量は10mg程度。人に対する毒性はほとんど無い。基準値を超えるようになると、水が着色したり(赤水)、異臭味(金気臭、苦味)を与える。
No.35 銅及びその化合物
自然水中の銅は地質に由来するが、鉱山排水、工場排水、農薬散布による汚染に起因することもある。水道の障害としては、銅製の給水管及び銅管を使った給湯器からの銅の溶出があり、着色(青色)や銅特有の金属味を呈する。銅は生体の必須元素で、欠乏すると貧血症状、Menkes症候群の毛髪異常が現われる。成人の1日必要摂取量は約2mg。高濃度の水を摂取すると嘔吐、吐き気、下痢、腹痛の症状が見られるが、人に対する毒性は低い。基準値を超えるようになると、タイルや布類等が着色(青色)したり、異味(独特の金属味)を与える。
No.36 ナトリウム及びその化合物
すべての自然水中にナトリウムは存在し、工場排水、生活排水、海水等の混入により濃度が増加する。ナトリウムは生体の必須元素で、成人の1日必要摂取量は約500mgと考えられている。飲料水からの摂取量は、食品由来と比較すると極めて少ない。過剰摂取による高血圧症等が懸念されている。基準値を超えるようになると、水の味に影響する。
No.37 マンガン及びその化合物
自然水中のマンガンは主に地質に由来し、通常鉄と共存してその1/10程度は含まれている。水道の障害としては、配・給水管壁に付着したマンガン酸化物が流速の変化により剥離して流出する、いわゆる黒い水がある。マンガンは生体の必須元素で、欠乏すると成長の鈍化、貧血、生殖障害等が現われる。成人の1日必要摂取量は約4mg。高濃度の水を摂取すると昏睡、筋緊張や筋痙縮の増加、精神障害等が見られるが、人に対する毒性は低い。基準値を超えるようになると、水が着色(黒色)する。
No.38 塩化物イオン
自然水中の塩化物イオンは主に地質に由来して広く存在しており、海水、生活排水、工業排水、し尿等の混入により増加する。飲料水からの摂取量は、食品由来と比較すると極めて少ない。過剰摂取は心臓病、腎臓病患者への悪影響が懸念されている。基準値を超えるようになると、塩味を感じはじめる。また、塩化物イオンは金属を腐食させるので、濃度は低い方が望ましい。
No.39 カルシウム・マグネシウム等(硬度)
硬度は、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量を、これに対応する炭酸カルシウムに換算したもので、0~60mg/Lが軟水、60~120mg/Lが中程度の軟水、120~180mg/Lが硬水、180mg/L以上が非常な硬水とされている。自然水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンは主に地質に由来しているが、海水、工場排水、下水の混入、コンクリート構造物からの溶出等により増加する。硬度が高いと石鹸の洗浄効果を著しく低下させ、胃腸を害して下痢を起こす場合がある。また、硬度は水の味に影響を与え、硬度の高い水は口に残るような味がし、硬度の低すぎる水は淡白でコクがない味がする。
No.40 蒸発残留物
蒸発残留物は水をそのまま蒸発乾固した時に残る物質の総量を表わし、その成分はカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、ケイ酸等の無機塩類及び有機物で、そのほとんどが地質に由来する。蒸発残留物は基準値を超えても健康への影響はほとんどないが、蒸発残留物に含まれる無機塩類は味に影響し、多く含む場合も、極端に少ない場合も味をまずくする。
No.41 陰イオン界面活性剤
陰イオン界面活性剤は合成洗剤、化粧品、医薬品、製紙等に多く利用されており、水の表面張力の低下、浸透・湿潤の増大、油脂等の乳化・分散・懸濁性を促進する特性がある。陰イオン界面活性剤は、家庭雑排水が直接又は下水処理場を経由して河川へ流入することによって、広く水域環境中に存在する。基準値を超えるようになると、水が泡立ちはじめる。
No.42 ジェオスミン
湖沼、貯水池及び河川で繁殖する藍藻類のプランクトンや放線菌により産生される異臭味物質でかび臭を呈する。個人差はあるが、基準値を超えるようになると、かび臭を感じるようになる。
No.43 2-メチルイソボルネオール
湖沼、貯水池及び河川で繁殖する藍藻類のプランクトンや放線菌により産生される異臭味物質でかび臭を呈する。個人差はあるが、基準値を超えるようになると、かび臭を感じるようになる。
No.44 非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤は水溶液中で有効成分が電離しないタイプの界面活性剤である。硬水、金属塩、比較的高濃度の酸・アルカリ水溶液中でも強く界面活性能を示すため、陰イオン界面活性剤と併用して広範囲に使用されている。非イオン界面活性剤は、家庭雑排水が直接又は下水処理場を経由して河川へ流入することによって、広く水域環境中に存在する。基準値を超えるようになると、水が泡立ちはじめる。
No.45 フェノール類
フェノール類は、ベンゼン及びその他芳香族炭化水素に水酸基(OH)が置換した化合物の総称で、防腐剤や消毒剤として、または医薬品、合成樹脂、爆薬等の原料として使用されている。自然水中に含まれることはなく、汚染源は化学工場等の排水、アスファルト舗装道路洗浄排水である。人への健康影響は、中枢神経系の麻痺、消化器系粘膜の炎症、嘔吐、痙攣等である。フェノールを含む原水を塩素処理すると、クロロフェノールが生成し、水に異臭味を与える。基準値を超えるようになると、異臭味を感じはじめる。
No.46 有機物(全有機炭素(TOC)の量)
水中に存在する有機物に含まれる炭素の総量のこと。炭素は有機物の主要成分であるので、全有機炭素(TOC)は有機汚染物質の直接的な指標となる。また、この値が小さいほど、水の味はよく感じられる。
No.47 pH値
水の酸性やアルカリ性の程度を表わす水素イオン濃度指数で、pH=7が中性、7より小さいほど酸性が強く、7より大きいほどアルカリ性が強い。水の最も基本的な性質であり、水質の変化、生物繁殖の消長、腐食性、浄水処理への影響等に関与する重要な因子である。
No.48 味
水の味は、水に溶存する物質の種類、濃度によって感じ方が変わってくる。水道の障害としては、海水の混入(塩味)、凝集用薬品の過剰注入(渋味)、給水管からの鉄・銅・亜鉛の溶出(金属味・渋味)等である。
No.49 臭気
水の臭気は、水中の臭気物質が空気中に気散し、これを吸気することにより感じる。水道の障害としては、藻類や放線菌等の生物に起因する臭気(かび臭・藻臭・魚臭等)、有機化合物の汚染等に起因する臭気(薬品臭・油様臭)、配・給水施設に起因する臭気(金気臭・新管臭)等である。
No.50 色度
色度は、水の色の程度を数値で示すもの。成分は主にフミン質(樹木や植物が微生物により分解された有機高分子化合物:黄褐色)や金属類(鉄:赤褐色、マンガン:黒色、銅:青色、亜鉛:白色)である。色のある水は、水道水の快適な使用を妨げ、また水の清濁、汚染の指標となる。基準値を超えるようになると、肉眼でも着色がわかるようになる。
No.51 濁度
濁度は、水の濁りの程度を数値で示すもの。成分は主に浄水処理で漏出した微粒子や配管内のさびや堆積物が流出した微粒子や配水過程で混入した汚染物質等で、粘土性物質、鉄さび、プランクトン、有機物質等で構成されている。濁りは、水の清濁、汚染状態、水処理効果の判定等の指標となる。基準値を超えるようになると、肉眼でも濁りがわかるようになる。「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」(平成8年10月)により、浄水場のろ過水濁度を0.1度以下に維持するよう、浄水処理を徹底することとされている。
残留塩素
水道法により、塩素又は結合塩素で水道水の消毒を行い、給水栓水で残留塩素を保持することが義務づけられている。塩素剤としては、液化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)が、結合塩素としてはクロラミンが用いられている。遊離残留塩素の殺菌効果として、大腸菌は、0.1mg/Lで16秒で99%不活化し(pH値7.0)、腸チフス菌・赤痢菌・コレラ菌等は、0.1mg/Lで15~30秒で死滅する(室温、pH値6.2~7.4)。